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Statement

時代を遡ると、人が自らの想像力を頼りに
無から何かを創り出す行為は社会と切実に関わるものでした。

アートとは絵画や彫刻といった芸術作品そのものを指すのではなく、
それら芸術品が各時代においてどのような役割を担うか、という概念です。
歴史に残る作品は芸術家本人の思考を超えて、時代を反映するものです。

MeltingPotはアーティストと伴走し、現代における様々な課題をアートを通して解決していきます。

column

  •     アジアで活動する現代美術家、 山本愛子が全6回に渡り、旬なアジアのアートコラムをお届けします。   第4回「記憶という糸、歴史という布」   私はいま台北宝蔵巌国際芸術村いる。ここに来て早1ヶ月半。灼熱の太陽、虫の音が止むのは夕立のときのみというほど、生命の活気が日々全身に染みわたるような土地だ。台北国際芸術村のレジデンスプログラムの一貫で、私はここに3ヶ月間スタジオ兼住居を提供していただいている。9月の台北での個展に向け、滞在制作折り返し地点というところだ。   宝蔵巌国際芸術村 Treasure Hill Artist Village   ここ数ヶ月、私は「記憶」にまつわる旅をしている。というのは、現在私は展示に向けて「記憶のタペストリー」を作っていて、それにまつわるリサーチや素材集めを行っている。また、先月初めまでは「記憶の痕跡」というテーマの授業を中国美術学院で行っていた。   中国美術学院での授業の様子   授業内容は、簡単にいうと布と染めを使って皆で遊んで学ぶというもの。染色をしていると、環境をよく観察するようになる。授業のある日、晴れたり曇ったりと不安定な天候の日があった。皆で雲の動きを見つめ「次の雲が去ったら15分くらいは晴れそうだね」などと会話をし、そのタイミングを見計らい布を日光に晒しにいく。他者と一緒にじっと雲を見つめるというシンプルな行為。大人になるといつしか「普段やらないこと」になっているのではないだろうか。   雨の日は、雨の日にできることする   光の記憶、大地の記憶、空気の記憶。自然の力で染めた布は、それら記憶の痕跡。自然現象と触れ合いながら制作をするという尊い時間を他者と共有できたことに、授業の価値があったのだなと思う。   成果展「記憶の海」搬入の様子   そして今、私のいる宝蔵巌国際芸術村。この芸術村はかつて、日本統治時代に日本軍の軍事施設だった場所である。戦後、台湾にやって来た国民党軍がそのまま軍事施設として利用。70 年代、軍の撤収後も老兵や退役軍人が住み着いた。80 年代に存続の危機があったが反対運動が続き、2004 年に正式に歴史的建築物として登録、集落の保存が決定。2010 年に住民と芸術家が共存する国際芸術村になり、今に至っている。   宝蔵巌国際芸術村 Treasure Hill Artist Village   今日こうして平和な環境の中で制作活動ができていることに重みを感じる場所だ。今が大きなうねりの果ての最先端ということを実感し、これからのためには今何ができるだろう、ということを自然と考えされられる。私以外に10名ほどの国内外アーティストが滞在し、期間中にトークや交流会が盛んに行われている。   台北国際芸術村 滞在アーティスのトーク等が定期的に行われている     先週、台湾原住民タイヤル族の住む清泉部落に行ってきた。タイヤル族は麻織物が有名で、その制作過程のリサーチを目的に訪れた。車窓から美しい山々が見えてくると、自分の心身が喜んで呼吸しているのを感じる。   清泉部落   タイヤル族の部落で出会った同年代くらいの女性が、私が日本人だとわかると、鳩ぽっぽを急に歌い出した。え、なんで知ってるの?と聞くと、よく祖母が歌ってくれたからだそう。年配のタイヤル族の方には日本語が流暢な方が多く、私を見ると嬉しそうに日本語で話しかけてくれるのです。   タイヤル族と共に、布を羽織らせてもらった   布を織り、ご飯を食べ、ギター1本を囲い歌ったりと、何とも素敵な時間を過ごした翌日、帰り際に山郷にある民族記念館に訪れた。そこには日本人による慰安婦などの負の歴史も残っていた。 今日という日までに、一体どれだけの人が理不尽に傷つき悲しんだのだろう。アジアの美しい暮らしに触れるたび思うのは、そこには負の影が表裏一体ということだ。           部落から台北へ戻る道中、特急列車でひとりぼんやりと、美しい山奥でパッタンパッタンと布を織っていたタイヤル族のおばあちゃんを思い出す。そしてふと、 個人の記憶が糸だとしたら、その糸で織り成した布が共通の歴史なのかなぁ、などと考えた。 おばあちゃんは「織りの基本になる糸の成り立ちを知ることが最も大切」と言って、植物が糸になるそのプロセスを私たちに一番念入りに教えてくれた。タイヤル族は、カラムシの茎から麻糸を作る。    カラムシの茎を刈るタイヤル族のおばあちゃん   私たちは山を分け入り、野草のカラムシが生えているところまで歩いていった。 炎天下の山懐で、カラムシの葉っぱをちぎって食べてごらん、すりつぶして肌に塗ってごらん、とタイヤル族が私たちに教えてくれた。言われるままにやってみると、葉は薄味だけど、ちょっと粘り気があって噛み応えがあった。カラムシは糸にもなるし、食物にもなるし、虫除けや塗り薬にもなる。糸になる前の植物は、様々な可能性を秘めている。     個人の記憶が糸だとしたら、糸になる以前の植物自体が個人そのものなのだろうか。 今を生きるあなたや私も、野草のカラムシなのかも、と妄想した。     生成される糸の質感は、カラムシの茎の長さや太さによって様々だ。それは、風土がどのようにその茎に影響をもたらしたか、という背景である。 様々な風土の記憶を持つ無数の糸が織り重なり一枚の布が出来上がる。布を構成する一本一本の糸を見つめ、その糸がかつて植物だった頃のこと、当時の土の匂いや燦々とした陽光を感じとることは、まさに歴史を紐解く行為だ。   うろ覚えの鳩ぽっぽを笑顔で歌ってくれる目の前の彼女に対し、なぜ歌えるんだろう?という好奇心を向けたとき。理由を知り、彼女の祖母の歌声が重なって聴こえるような気がしたとき。この糸はかつてどんな植物だったんだろう、どんな大地に生まれたのだろう、と想いを馳せたとき。遠いと思っていた歴史が、ぐっと近づき自分事になってくる。         筆者プロフィール 山本愛子 Aiko YAMAMOTO 作家 ウェブサイト http://aikoyamamoto.net 1991年 神奈川県生 2017年 東京藝術大学先端芸術表現科大学院修了 2018年から現在、ポーラ美術財団在外研修員として杭州に滞在中。

  • 平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。 さて、誠に勝手ながら下記の通り休業させていただきます。 ご迷惑をお掛けいたしました、何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。   【夏季休業期間について】 2019年8月10日(土)~ 2019年8月18日(日) 営業開始は8月19日(月)からとなります。

  •     中国 杭州に滞在する現代美術家、 山本愛子が全6回に渡り、旬なアジアのアートコラムをお届けします。   芸術の季節 - 南京・杭州にて   月1を目処にコラムを執筆する話だったが、6月分を更新できておらず、怒涛の月日が過ぎ去っていたのだと気づく。中国の5月末~6月は展覧会シーズンだ。ものすごい数の展覧会やアートイベントがあちこちで一気にオープンする。私もこの時期にいくつかの展覧会やプロジェクトに関わったので、前半/後半に分けて記事にする。前半では、この時期に私が参加した3つの展覧会を通して中国アートシーンの一片をご紹介できればと思います。 24時間美術館(南京) まず、5月末にオープンした南京24時間美術館での展覧会“罗曼蒂克的写法”について紹介したい。(現在も展示中、10月30日まで)。去年末から水面下で進めていたものだ。杭州で出会ったキュレーターの宋振熙(Song Zhen Xi)氏からのお誘い。近年、彼の名を見ないことがないほど、中国で精力的に活動している若手キュレーターである。彼は一体何人いるんだという仕事っぷり、聡明でチャーミング、そして一児の父でもある。戦っている人だなあと思う。 アーティスト達と話すキュレーターの宋振熙(Song Zhen Xi)氏(右) 宋振熙氏の企画展 “罗曼蒂克的写法”(和訳:ロマンスのえがき方)、彼がセレクトした5名のアーティストが個展形式で展示をする。一般的な美術館とは異なり、広場にガラス張りの建物が点在していて、いつでも市民にオープンに向けられているのが特徴だ。展示オープニングではパーティーで交流を楽しみ日暮れからツアーを開催した。 古师承(Gu Shicheng)《RICH SHOP》 富と名声を虚しいロマンスと捉えた「RICH SHOP」24H営業のコンビニエンスストアをイメージした空間でハイブランドを皮肉ったパロディ商品を販売している。   王玮珏(Wang Wei Jie)《够了 - Enough》 全て羊毛でできており、ニードルを刺し続け羊毛を縮絨させるという労働(暴力的な)によって制作されている。この写真だと見えないのだけど奥にダブルベットがあり、ひも状のものがへその緒で、その先に赤子が浮いてるという空間。   王海龙(Wang Hao Long)《DVD的爱》   刘影(Liu Ying)《蝴蝶飞不过沧海》    山本愛子《幻影風景》 私は「現実を見据えた奥にある幻想」というコンセプトで、日々の騒がしさでかき消されてしまう自然現象に感覚を向けることを鑑賞者に促した。そこから見えてくる原始的な風景を、今回の展示では”幻影風景"と呼んだ。   象山芸術公社で行われた第1回浙江国際青少年アートウィーク会場の様子 南京と同時期にオープンしたのが、杭州で初めての芸術祭「第1回浙江国際青少年アートウィーク」だ。中国美術学院の卒業制作展と若手作家による芸術祭がミックスしたようなイメージである。五四運動の100周年記念企画で、3000名以上のアーティストと美大生が参加した。大規模すぎてどこから紹介したら良いかわからないので、私と同じ展示会場で私の好きな作品、そして鑑賞者からも人気があった2名のアーティストの作品を紹介する。 刘帅(Liu Shuai)《無愛想な演奏1 / Unaffectionate performance1》   刘帅(Liu Shuai)《無愛想な演奏1 / Unaffectionate performance1》 摩擦と振動によって音が鳴るキリギリスの羽。各キリギリスに大きさや重さの異なる銅箔を装着することで音のピッチを変えている。共鳴する習性があるため、展示会場では不規則に彼らのコーラスを聴くことができる。     刘帅(Liu Shuai)《無愛想な演奏2 / Unaffectionate performance2》 電気ウナギが金属の棒に触れた時、体内の電流によって音が生じる仕組みになっている。     刘帅(Liu Shuai)《大槐安国 - 消化から生産まで / Huai’an State - from Digestion

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