作家リレーインタビュー

作家リレーインタビューVol.1

2018/03/20

☆作家リレーインタビューとは☆

作家リレーインタビューとは、若手の芸術家を紹介でつないでいくリレー式インタビューです。緩く楽しく繋がりながら、時々作り手からはハッとするような言葉を受けとるのが最上の喜びです。始まったばかりですが、お楽しみに!

聞き手としても回を重ねるごとに成長していきたいと思います。

第1回目は、展示レポートを書かせていただいた、彫刻家、松尾ほなみさんです。松尾さんは武蔵野美術大学彫刻科、東京芸術大学修士課程彫刻研究科を卒業され、現在は武蔵野美術大学で教務補助の仕事を行いながら作家活動をされています。

展示レポートはこちら

 

インタビューの経緯

松尾さんは、栃木県の小砂地区の森の中で、過去2回にわたって、彫刻作品を作っています。先日現地を見に行ってきました。

森の一画に、14体の彫刻作品が点在します。

森の一画に、14体の彫刻作品が点在します。



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森の番人のよう



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童話の世界に迷いこんだような感覚を受ける



この童話のような世界感に惹かれ、2018年度は、茨城県大子町の森でどのようなことができるか一緒に考えさせていただいてます。先日一緒に、下見に行き、制作にいい場所を発見されたようです。同じ森の中に彫刻、とは言っても、植生によって違ったりするので、それぞれの地域で何ができるかを考えます。アトリエを出て、都会を出て作品を展開している松尾さん、どんなことがきけるのか楽しみです。そんなこともあって、一回目のインタビューに応じていただきました。

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大子町の森での下見の様子



それでは、早速インタビューにいってみましょう!

 

まず、作品制作におけるコンセプトについて教えてください。

私の作品は時間を経て出来上がった素材を様々な形に置き換えることでできています。

例えば林の中にいる時は、生えている木に人を彫ることで、そこにはない雑踏の雰囲気を再現します。

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「都市の残像」2013



またある時は自分の大好きな漫画の本を固めて人工の木のような塊をつくり、そこに古代の神像を形づくります。

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「木造浅間神像模刻」 the replica of an oldest statue of Japanese gods 漫画本320,150,150 2017



硬く重たいイメージのある石があれば、肉のような柔らかいぬいぐるみの形を彫ります。

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「うその肉」 大理石/ h720 w950 d1070 2015



私が目指していることは、何でつくるのかと何をつくるのかの組み合わせで、常識と違和感の間に立てるような作品をつくることです。

 

学部は武蔵野美術大学(以下、ムサビ)から修士は東京芸術大学(以下、芸大)へ進学されましたね。どういった経緯があったのでしょうか。

学部と修士で場所を変えたのは、環境を変えるためでした。

武蔵美では講評の機会が多く、人の作品を見ることや自分の作品を見てもらうことで作品について考える力が身に付きました。また、作家として彫刻家としての考え方の芯を持つように鍛えられたように感じます。その後、一つの素材を扱う技術をしっかり身に着けたいと思い、芸大の院に進みました。そこではひたすら制作に没頭することができました。

他にも違う点で言えば、武蔵美は学校の施設が充実していました。自分の想像した形があり、技術さえ身についていればいくらでも作れる環境がありました。芸大はテントを立てたり、自分の制作スペースを作るところから始めなければいけませんでした。アトリエの環境を一から整える方法を考えることにつながり、これは大学卒業後作家活動を続けるにあたって良い経験だったと思っています。大学にはそれぞれ特徴があるので、どちらがいいというのではなく、それぞれの場所で得られるものを大切にしたいと感じています。

 

かなり有意義に大学という環境を使えたようですね。今振り返ってみると美大とは、どのような場所であったと考えますか。

さきほどの話と少し被りますが、美大はこれから作家として生きる礎を築いた場所です。美大は制作することを許された場所でしたが、社会はそうではありません。そうすると、どうしても時間・環境・お金に対する考え方がけちけちしてきてしまう時もあると思うんです。その時に、学生の時にのびのびと、自由に制作していたことを思い出します。大学は自分にとっては初心に戻るために心の中にとっておく場所として考えています。

 

次は、大学卒業後についてお話を伺いたいと思います。私も今日お話しするまで知らなかったのですが、卒業後一年目は中学校の先生をされていたんですよね。

はい。神奈川で中学生の美術の専任講師になって、副担任を受け持ったりもしました。

 

それは忙しかったでしょうね。作家活動はできましたか?

いえ、、全くできませんでした。でも、だからこそ大切な1年になったと思っています。実は制作しようと思えば出来ないわけではなかったんです。時間もありましたし。時間はあるし、頭の隅では制作しなきゃ、と思っているのに家に帰るとぼーっとテレビとか見ちゃうんです。そして、今まで人に嫉妬することなんてなかったのに、同年代で活躍してる人に対してもそうですし、中学生に対してさえも嫉妬していました(笑)。「美術の時間」という作っていいよ!と言われている時間を受け取っている彼らが羨ましかったですね。おそらく彼らの持っている才能や自分にはない未来にも。

この時期はどうしても制作活動をする気にはならなくて、ひたすら新聞記事のスクラップを作っていました。自分は何に対して興味を持っているんだろう、ということだけは記録しておこうと思って。見ますか?暗いですよ。(実際に見させていただくと、悲報の切り抜き、なんとか美術に繋がってたいからと美術に関する記事の切り抜き、本来は憧れの的のはずなのに見る度に自分は比較して何をやっているんだろうと思うためのアスリートの活躍記事の切り抜き…心境を語りながら見せてくださって、、膨大な量でした)

 

かなり苦しそうですね(笑)。松尾さんは教員を1年で辞められました。当初は作家を目指しつつも、教員に重心が傾いていく人も多いと思うんですが、2年目からは完全に作家としてやっていこうと思いなおしたのには、どのような経緯があったのでしょうか?

今まで、制作することが当たり前の環境にいたので、制作抜きの人生なんて考えたことがなかったんですよ。それが、1年間なにも作らなくても生きられた。とてもショックでしたね、自分に対して(笑)。

あとは、専任講師だったので、作品を売ることができなかったんです。その時に初めて、あぁ私は作品を売りたいんだ、作品で認められたいんだと気づきました。それからは、ちょうど運よく武蔵美で仕事を見つけられて、4月に東京に戻り、アトリエも大学時に借りていたところに戻って制作活動を再開しました。やはり1年のブランクがあったので、何を作ればいいか分からなくなり、無理やり展示や滞在制作の予定を入れました。そこからはとにかく出来ることをやっています。

教員という肩書もなくなったので、社会的に見たらぷーたろう状態で、人の目が全く気にならないと言えば嘘になりますが、一番大切なプライドは自分の作品に対するプライドですから、そこだけは絶対に揺るがないように、それ以外は二の次に考えています。

 

作家としては、まだ始まったばかりということだと思いますが、これからどのように発展していこうと考えていますか。

正直、大学を出ての制作活動はまだ1年目なので手探り状態ですが、これからも東京近辺で展示を行いながら、1年に1回は外部と関わりを持つプロジェクトをスケジュールに組み込んでいく予定です。今まで、栃木の森の中で木彫を行いましたし、それはこれからも続けたいと思っています。自分の作品を様々な地域に置いていくことには興味があります。作る間はとても思い入れがありますが、その後は作品を現地の方々が守ってくださっていて、その土地の空気を吸いながら作品も時間の経過とともに少しずつ変化するのだと思います。

 

日本で活動すること(場所)の意味について考えていることはありますか。

はい。どこで発表するか、はとても大切です。特に自分の場合は素材を活かしていきたいので、自分の持ち味を一番発揮できる、作品の需要があるところで発表していきたいです。海外でプロジェクトを行ってみたいという思いはありますが、まだまだやってないこと、やりたいことが日本でありますし、まだ成長できると思っているので、あと2,3年は日本にいたいです。日本人なのに日本の文化をまだ知らないですし。

あと、場所ではないですが、自分はモノ(素材)を扱うことからから逃れられないと思うんです。そこは意識して作品を作っていきたいですね。

 

最後に、これから様々な作家にインタビューを行っていく中で興味があることがあるのですが、こだわりの道具を教えていただけますか。

ふたつあります。

切り出しナイフ

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これは大学に入ってすぐに、授業で使うために買ったものです。小刀の形がシンプルで一目で気に入りました。最初は道具の手入れの仕方がわからず、すぐサビだらけにして使えなくしてしまいました。後になってサビのつかない工夫をしたりたまに研ぐようにしたところ使い勝手が良くなり、ちょっとしたものを切る時にとても便利なことに気付きました。最近は紙を積層させたものを切るのによく使います。小さいながらとてもいい仕事をしてくれてます。

 

鉄ベラ

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石を削ったり、磨くために使う道具です。御徒町の道具屋で買いました。ヘラの先におろし金のような突起がついていて、小さくても造りがいいのででかなり長持ちします。すんなりした形が手によく馴染み、これを持つだけでなんとなく気持ちが落ち着きます。石をやっているときには細かい形を作るのに助けられるだけでなく、たまに他の素材にも使えるなと、ちょこちょこ出番がくる道具です。

あ、あとは道具ではないですが、、自分の気になったものや言葉を記録し続けているノートがあります。浪人時代からずっと続けているので、何十冊も部屋に積みあがっています。もしかしたらこれこそ、お気に入りの道具?かもしれません(笑)

見てみたいです。(笑)

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初のインタビューで聞き手として不慣れなにも関わらず、楽しく応じていただけました。さて、次に紹介していただける作家さんとお話しできることが楽しみです!

インタビューのクオリティも少しずつ高くしていけるように頑張ります。

松尾さん、長々と、ありがとうございました!

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