作家リレーインタビュー

作家(リレー)インタビュー Vol.4

作家リレーインタビュー第4弾は、木床亜由実さんです。

木床さんは、武蔵野美術大学油画修士課程を2015年に修了されて、作家活動を続けられています。先日、代々木で行われていた個展にうかがい、作品の気になる方だったので、インタビューをお願いしたところ快く応じていただきました。

 

展示の様子

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河口:木床さんとの出会いは、先日の個展で、個展タイトルは「N」でしたね。それにはどのような意図があったのですか?

木床:個展タイトルは、私の作品に何か共通する事って何かなと考えた時に、自然物を描くことが多いのでNatureだったり、絵画の理想を具象か抽象と考えた時に中立的な立場を取っているので、Neutralだったり、初めての個展だったのでNewだったりの頭文字を取って「N」にしました。意味を持つ「ことば」を展示名につけて特定の印象を与えたくなかった、ということもあります。

 

―個展タイトルは作品に共通するところから着想を得た、ということですが、木床さんの作品に共通するコンセプトはあるのでしょうか?

木床:テーマは作品ごとに設定しているので、共通のコンセプト、というと難しいです。内容的には共通していないのですが、私の絵は具象では描いているけれど、個々のモチーフは絵の要素として使っていて、ストーリーというよりは、視覚的に印象に残る絵を描ければいいと思っています。

例えば、木とかは絵の構図の流れが作りやすく、有機的な形態を描く方が好きで、気に入ったモチーフは何回か出てきています。

 

―構図というと、個展の中で出品されていた作品の中で、新作と旧作とではだいぶ異なるように感じました。そういった、構図や、間の取り方、には意識の変化はあったのですか?

木床:意識的な変化はないです。私の場合は、意識的にというよりは、自分の癖など、直せない部分が作品に大きく影響しているのだと感じています。

新作の大きい作品は、私の作品としては密度は少ないです。制作時間の変化は大きな要因です。一生描いていていいと言われたら、たぶんいつまでも描いているんだと思いますが、今は、時間から逆算して、作品として成立するラインを見極めて描くようになっています。「間」を作る事は得意ではないのですが、自分の環境の変化は、強く作品に影響していると思いますし、それはポジティブな形で作品に返還しています。

 

―浮世絵を題材にした絵を描かれていましたよね。

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下は構図の参考とした、喜多川歌麿の「歌満くら」出典元:https://edo-g.com/blog/2015/11/shunga.html/uta_makura_m

他に、どのような作家に影響を受けてこられたのですか?

木床:わたしは、そもそもの美術への入りが、アニメや漫画、ゲームだったんです。それで、小学校の頃は、ポケモン世代なんですが、デジモン・ポケモンを描いてました。

 

―あぁ、小学校、そういう子いましたね(笑)。うまい子はクラスの子達から尊敬のまなざしで見られる。

木床:はい、まさにそういうタイプの子でした。ポケモン151匹描くのがステータス、っていう。

アート方面での影響というとぐっと最近の話になって、若冲やホックニーは好きですね。両方とも美術の道を志した頃に出会ったんだと思いますが、若冲は見た時から好きで、ホックニーは色はかなり影響受けているかも。

性格ミーハーなので、その場その場で好きになったものを作品に取り入れたりしています。最近の例だと、大学院時代から絵の修理工房で働いているのですが、難波田龍起っていう人の絵が来た時、埴輪の絵があって、その後すぐに自分の作品でも埴輪を描きました。思いがけない絵に出会える環境はいいですね。

 

―木床さんの絵って、明るいというか、作品に全く闇がないようこともひとつ共通点であるように感じます。色使いはひとつの要素なのかな。人に見て欲しいところとかってあるんですか?

木床:色は褒めていただけると嬉しいです。私自身も明るい作品が好き。若冲とホックニーも作品に闇がないと思います。見る人に普通に楽しんでもらいたいという思いが強いんです。

私自身、もちろん毎日ハッピーというわけではないんですけど、それこそ雨だとちょっと気持ちが落ち込む、というような(笑)。でも、わたしはどうしても、描くのに時間がかかる、長期的になるので、一時の気持ちで書くということができないんです。今日は雨だから憂鬱、でもその次は晴れちゃったりして。そうすると、長いスパンのなかで結果、自分の絵になるんです。

色は、少しずつ変化しながらも、これからもこんな形で描いていくのかなぁと思っています。私は油絵具使っていますが、アクリル絵具がうまく使えないんですよね。例えるならば、アクリルはマーガリン、油はバターって感じです。料理に使うと、まったく深みが違うじゃないですか。でも、両方メリットデメリットがあるので、これから研究していくところです。

 

―それはすごく分かりやすい例ですね(笑)

ところで、特に思い出深い、あるいは何等かの転機となった作品はあるのですか?ポートフォリオを見ると、かなり昔の作品から入っているのですが、比較的テイストは変化していないようにも見えます。

 

木床:転機となった作品といえばこれですね。

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予備校時代に受験絵画に慣れないときにかいたものです。とにかく受験絵画が苦手で。課題の中に取材(スケッチ)に出かけて作品を完成させる、というものがあるんですけど、もう苦手過ぎて、隠れるようにして、この落書きを描いていたんです。それが講師にばれて、あぁ怒られると思ったら思いがけず、いいじゃんと言われて。この時描いた絵は、結局油彩にしたら全然成り立たなかったんですけど、今の土台となっています。今思うと、受験はこうでなければいけない、と自分で自分の首を絞めることもあったのだと思います。

 

―なるほど。受験時代はかなり苦労されたようですね。今振り返ってみると、美大とはどのような場所でしたか?

いいとこでした。環境も先生もよかったです。先ほども言いましたが、自分はとにかく描いていって作品を完成させるタイプなので、受験が苦手だったのは、とにかく間に合わない、という時間的制約がおおきかったんですよ。大学に入ると時間もたっぷりあるし、作品も予備校の頃に比べれば肯定されて、憧れる先生もいて、自然と卒業後もずっと絵を描いていこうと思いましたね。大学院は樺山祐和先生のクラスで、やりたいことを見守ってくださる方で大変お世話になりました。遠藤彰子先生は、本当にものすごく大きい絵をものすごい密度で描く先生で、憧れましたね。

hirokazukabayama樺山祐和「森にうつるもうひとつの森へ-杜-」

出典元:新制作協会 http://www.shinseisaku.net/wp/archives/2462

 

akikoendo遠藤彰子「鐘」

333.3×745.5cm 出典元: 公式HP

―大学院を卒業されて3年目ということですが、今後どのように発展していこうと考えていますか?

木床:先のことを考えるのは苦手です(笑)。とにかく制作は続けていく、毎日描き続ける、ということしかありません。

 

―活動拠点についてですが、日本で活動することの意味について考えることはありますか。海外に行くことは考えますか。

木床:私の絵は、日本の絵によせていて、日本人っていうのをアイデンティティとして持っている、持ちたいと思ってるんです。日本人はとにかく手が器用。私も、描く行為に重きをおいています。それはひとつ日本人っぽさだと思っています。構図も、江戸の浮世絵を参考にすることはあって、単純にかっこいいです。憧れはすごくある。絵じゃないとできない平面性は大事にしていますね。

制作場所を海外に置くことは現段階では考えていませんが、大学にいたときも色とかアジアに受けそうと言われて、作品を海外に持っていくことで、他国の人の反応は見てみたいです。

 

―最後に、この記事は広く一般の方に読んでいただくことを前提にしているので、共通の質問があると面白いかなと思っていまして、こだわりの道具や制作においてこだわっている部分があれば教えてください。

木床:ニードルですかね。絵具を付けて削って線を出す時に銅版画のニードルで出します。葉っぱも葉脈まで描いているので、使い勝手がいいです。何回も使ってると先が太くなってきて、手にも馴染んできて自分だけの道具になります。

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あとは、絵のこだわりでは、砂というか土の描き方。空は、今まであんまり書いてきてなくてまだ研究中なんですが。本当に絵具ひと塗りで終わらせることができなくて、全てを描くことでしか終えられないんです。それで、土は方向性は決まってきました。

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研究中の海、空はこんな感じですかね。

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左上の部分です。

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海はこのような感じです。

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―不得意な部分が、解決策を考えているうちに作品の持ち味になってくるのは面白いですね。ところで、この作品、木床さんが好きとおっしゃってる伊藤若冲の貝甲図に似ていませんか?!

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伊藤若冲「貝甲図」

引用元:https://paradjanov.biz/jakuchu/doshoku/163/

木床:あ、ほんとだ(笑)全然意識はしていませんでしたけど!

―今日はありがとうございました!

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