アートコラム

日本の芸術祭

2018/07/29

さて、前回のアートコラムでは、世界のアートマーケットをざっくりと見た。そして、日本のアートマーケットは小さい、というなんともネガティブな形で終わってしまった。しかし、これからの日本のアートという点に関しては、筆者はポジティブに見ている。

そこで、ここから数回に渡って、アート作品の売買という枠からは一旦離れて、日本国内の美術市場について検討してみたい。

日本で美術が取り扱われているのは、

・芸術祭(自治体)

・モニュメント購入(自治体)

・美術館(行政/自治体/民間)

・企業のアートワーク購入、コラボ活用

・ギャラリー

といったところだろうか。

今回のコラムでは芸術祭に関して簡単にデータを整理してみよう。ここでいう芸術祭とは、各自治体が秋に行う市民の発表の場としての文化祭とは異なり、外部からアーティストを招聘し、芸術振興に加えて開催地への人の積極的な流入や認知を目的として行うものを指すこととする。日本ほど大規模かつ多様な芸術祭が行われている国は他にない。

2014/3/31,ニッセイ基礎研レポート,吉本光宏,「トリエンナーレの時代-国際芸術祭は何を問いかけているのか」より

2014/3/31,ニッセイ基礎研レポート,吉本光宏,「トリエンナーレの時代-国際芸術祭は何を問いかけているのか」より



これらの中でも、国内外に向けた現代美術都市としての発信と、地域の魅力発信を主軸とするものがあるが、そこは分類せず、いくつかの大規模な芸術祭の予算と来場者数を取り上げてみよう。各芸術祭はこれまでの開催数も異なるがここでは大体の規模感を把握していただくために、最も近年開催されたものの数字のみを挙げる。詳細が気になる方は各HPの開催報告書に細かく記されているので、そちらを見ていただければと思う。中之条ビエンナーレが気になるところだが、報告書を発見することができなかった。
予算(千円) 実施日数(日) 来場者数(人)
瀬戸内国際芸術祭 1,238,000 108 1,040,050
あいちトリエンナーレ 1,155,081 74 601,635
ヨコハマトリエンナーレ 956,968 88 259,032
さいたまトリエンナーレ 522,287 79 361,127
茨城県北芸術祭 478,956 65 776,481
新潟妻有大地の芸術祭 382,593 50 510,690
芸術祭によく足を運ぶ人でなければ、アートの催しにこれだけの予算と人が動員されているのか、と驚くかもしれない。芸術祭は直近でも毎年のように新しく生まれているし、予算額数百万円規模の小規模芸術祭も合わせると、その数は50はくだらないだろう。

各地で芸術祭が増加する要因はどこにあるのだろうか。このことは逆に近年中止が続いている自治体イベントから考えてみたい。ニュースでも取り上げられていたことから、多くの人が知っていることと思うが、夏の風物詩、花火大会である。有名どころの花火大会に行ったことのある人なら分かると思うが、行列を亀のような速度で進んでいるうちに、花火の打ち上げが始まる。中止の原因は来場者不足ではなく、逆に見物客が集まりすぎて警備費がかさんでいることや、マナー違反対策のため資金不足である。警備費が花火費とほぼ同額いった花火大会もあるほどだ。

これらの資金不足の一部を有料席を増設することで補っている花火大会もあるが、あるレポートによると(引用元を消してしまったので見つけ次第更新する)ほとんどの来場者が有料席は利用しないと答え、花火大会当日の予算は「1,000円未満」がトップであった。

ここで芸術祭の話に戻ると、芸術祭はチケットを購入して作品を見て回ることが前提となっている。要は美術館と同様入場料というものが存在するのだ。野外に置かれている作品も多くあり、チケットを購入せずに作品を見る人がいる事も課題になっているものの、来場者のカウントはチケット購入者からされており、かつチケットも2000円前後のものが多い。花火大会は1日かつ短時間で終了するのに対し、多くの芸術祭は1日では回り切れない規模となっている。必然的に一人あたりが落としていく金額も大きくなる。これらのことから、近年の芸術祭ブームの火付け役となったとも言われる越後妻有大地の芸術祭の成功例から、各地自治体もより経済効果の高い芸術祭へ移行しているものと思われる。最も、文化は一朝一夕でなるものではなく、そこには多大な労力が費やされているのであるが。

さて、今回はざっくりと芸術祭の規模感についてみてみた。簡単に数値を取り上げたものであるが、前述した越後妻有大地の芸術祭は7月29日から9月17日まで開催されている。新潟市で同時期に開催されている水と土の芸術祭とともに、お盆休みに行ってみてはいかがだろうか。新潟市美術館では水と土の芸術祭の関連企画も行われている。

乱立する芸術祭には賛否両論ある。しかし実際に行ってみてギャラリーのホワイトキューブ、展示のために整理された美術館とは異なる、自然豊かな地での展示を感じてみれば、アートの新たな可能性に気付くのではないだろうか。

 

 

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