アートコラム

アートを購入する富裕層①

月のアートコラムでは、欧州美術財団(TEFAF)のレポートを引用しながら世界のアートマーケットについて概要を見た。その際に日本についての記述の少なさを述べたが、今回はTEFAFレポート同様バブル期についてであるが、日本について数ページに渡って興味深い記述されていたので、Art BaselとUBSによる「The Art Market 2018」を見てみる。アートマーケットレポートは各団体のウェブサイトから誰でもダウンロードすることができるので、読んでみると面白いかもしれない。TEFAFの方がアートについて詳細に、バーゼルの方がアートと経済を絡めて読みやすいアウトプットの仕方をしている印象である。

TEFAF

Art Basel

 

さて、アートコレクターと言った時にみなさんはどういった人を想像するだろうか。巷には数千円から購入できるアートもあるわけであるが(そしてそれらが後に大きな価値を持つことも稀にある)、コレクターともなると、なんとなく、とんでもない桁の金額をアートを投入していそうである。彼らは何を目的に、どのようなアート作品を購入しているのだろうか。

Art Baselのレポートによると、

富裕層の35%はアートコレクターとして活動的であり、そのうち93%が500万未満のアートを最も頻繁に購入し、1%未満が1億円以上の作品を購入する。またコレクターのうち32%のみのコレクターが、購入したアートワークの価格が高騰することによるリターンを期待すると応え、86%のコレクターがコレクションの中から作品を売ったことがないと回答した

とある。

富裕層の定義についてはレポートで明記されていないものの、近年のアートの価格高騰を見るに、投機目的の人が多いのだろうと想像していたが、リターンを期待する人が3割程度というのは、予想以上に低かった。数千万円以上の作品は投機目的に購入されることも多いと聞いたことがあるが、アートを所有すること、それ自体に価値を置く人が多いのだろう。そして大規模なコレクターであるほど、コレクションを多くの人に見てもらうために美術館に貸し出したり、自ら美術館を建設してコレクションを公開する。

そんなアートコレクターはどのようなアートを購入するのだろうか。過去の巨匠の作品の価格は安定して高価であるが、Art Baselのレポートによると、過去2年間、購入されたアート作品の85%がアメリカ出身の、もしくはアメリカ国内で活動するアーティストのもので、84%が生きているアーティストのものであった。

これと対照的であったのが、バブル期の日本である。レポート原文をそのまま引用すると、私自身があたかも日本を批判するようであるが、そうではない。現在国際的に日本がこういった評価をされてしまっていることは残念だが、これを事実と認識した上で今後どうしていくか、という点を考えていきたいのである。

ここからは原文(つたない訳は河口)をそのまま載せる。

1990年には、日本がアジア圏では最もアートを購入する国であり、同時にイギリス、アメリカを抜いて世界のアート輸入量の30%を占めるアート輸入最大国となった。この時点での中国(香港を含む)の輸入量は1%未満であった。しかし、これは相当に内向きな流れであった。というのも、当時の日本のアート輸出量は世界の0.1%に満たなかったからである。

1980年代の悪名高いアートマーケットバブルは、その後10年ほどに渡る印象派絵画を中心とした日本の強い購買によってさらに悪化した。

・・・

日本人の余剰資金は、ハイリスクな資金調達とともに、時には美術資産を使った違法な取引や慣行など、新規購入者の一部による不十分な知識によってもたらされた。その結果、アート価格は急激に上昇し、往々にして平凡な作品に莫大な額が払われた。

(当時の日本の一部の企業は、借り入れ、貸付、場合によってはマネーロンダリング、現金脱税の隠蔽に、評価が曖昧であるアートを使用していたとの報告がされている。)

後半の部分は、多くの日本企業が名画をオークションで競り落とし、バブル崩壊とともにそれらを手放したことが批判されたことは多くの人の知るところである。

日本人が印象派を非常に好むのは、今でも美術館の大規模巡回展示を見れば分かる話であるが、近年のアートコレクターが現存するアーティストを好んで購入することや、これらレポートを読んだうえで思い出すのは、MoMAの「我々は歴史に無関心であり、歴史は我々の活動の副産物であるという前提から始まっている」というMoMAが自らの果たすべき役割についての言葉である。

 

このように過去の出来事について散々に書かれている日本である。少々尻切れとんぼだが、これからのアート界における日本の立ち位置について、希望を込めて次回のアートコラムに書きたいと思う。

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