展示レポート

展示レポート Vol.11

『三越×藝大 夏の芸術祭2018』 古賀真弥

こんにちは。清水です。

夏の暑さも落ち着き寒さを感じ始めるこの頃ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

 

今回は、8月に日本橋三越で行われていた「MITSUKOSHI×東京藝術大学 夏の芸術祭2018」を訪ねた際のレポートをお届けします。

こうした百貨店タイプの美術展示は日本画や工芸などの誰しもが受け取りやすく美しい”美術”らしいものが好まれている印象があります。誰も見たことがないような斬新な“アート“的なものは販売が難しいためか、比較的少なめなイメージです。

 

何人か印象的だった作家さんをご紹介したあと、個人的に私の琴線に強く触れた彫金作家さんをぜひご紹介したいと思います。

 

まずはこちらの作家さん。

 

パッと見てああ面白いな、と感じました。書道のようなタッチで文字を使っていて、なおかつ絵としてイメージを形作ろうとしていることが分かります。

2
3
美大生などの若い作家の作品をたくさん見ていると、大体の作品はどこかで見たことのあるタイプに分類することができてしまいます。歴史上様々なことが成されてきた美術の世界において、唯一無二の新たな作家性を見つけ出すことはなかなかに難しい。

しかし、こちらの下村奈那さんの作品は私がどこでもあまり見かけたことのないタイプでした。確実に書道とは違うのですが、単色の墨で描かれた図像は文字的です。

「星を題材にした書の作品」とキャプションには説明書きがありましたが、いわゆる書道の形式でないのが楽しいですね。中国星座についての知見を制作に活かされている方のようです。

 

続いて面白いな、と思ったのがこちら。

4
5
分かりやすく面白い。先端芸術表現科の大学院出身の折原智江さんの作品。説明不要で楽しいですね。使ってしまうのはもったいない。

 

続いてはこちら先端芸術表現科の博士号取得、知念ありささん。壁の高い位置に展示されていましたが、熱量というか密度というか、放置できない強さに惹かれました。

花火をモチーフに、釘に糸を引っかけてゆく繰り返しの動作で記憶の断片を具現化した作品だそうです。

6
7
 

お次はアート的雰囲気のあるこちら。

8
9
ガラス棒の先端の球形部分に周りの世界が上下逆転して映り込んで見えます。

10
特定の角度から見ると、球の部分に色が見える仕組みになっている様子。作品タイトルは3本それぞれ別の色名になっていました。私はその角度を見つけられませんでしたが、それでもシンプルな見た目で色々と想像することができて面白かったです。

 

そして最後に、いよいよここからは私が一番惹かれた作家さんのご紹介。見た瞬間の色の感覚に引き込まれました。

11.5
 

写真では伝わりにくいですが、銅に着色を施した優しい鮮やかさが私にとってはどの作品よりも美しく感じられました。

工芸科、彫金を修了され現在東京芸大で助手をされている古賀真弥さん。

工芸科の作家さんの作品は、こうした販売を目的においた場では特に手に取りやすいアクセサリーや陶芸作品をよく見かける、というイメージがありました。そんな中、古賀さんの作品は使用が目的ではなく展示しておくためのオブジェ的で、ある意味彫刻科の立体作品のような立ち位置に感じました。

 

最初に特に気になったのはこちらの作品。

13
一瞬本当に水が湛えてあるかのように見えました。雨の日本庭園に置かれているのが似合う…そんな景色が浮かびます。水の重さを感じる。

14
次に目が行ったこちら、2点連作の水色とピンクの取り合わせがとても綺麗です。モチーフのチョイスが繊細で女性的にも感じられます。デザイン的に全く対になっているわけでもないのがまたセンスが良く、2つを見比べて違いを楽しむことができます。ピンクの淡さがとても上品。

 

お次はこちら。

15
真ん中の空洞に、また水が湛えてあるかのように樹脂が流し込まれています。海中の洞窟のように見える。中の葉っぱは大部分がレースのように透かして作られているため、暗がりの中でも映えるようになっています。水槽を覗いているような気持ちでじっと眺めることができる作品でした。

17
続いて向かって左側に置かれた作品に目を向けます。

19
20
はっきりとした水色が印象的なこちらの作品。真ん中の樹脂部分が多層の曇りガラスのようになっていて、また異なった雰囲気の抜けを作っています。

21
最後はこちら、平面的な形が他の作品と別の趣になっています。細い線で重ねられた円たちが雨打つ水面の波紋に見えます。次々と水滴が落ちて波紋が発生しては打ち消されていく様子が動画のように想像できました。

 

私がお金を貯めて古賀さんの作品を購入できるようになる日まで、絶対に制作を続けていてほしい…と願うほど心を掴まれました。

思えば、私がこれまでの人生で自分でお金を出して買いたいと思って買ってきた作品は何故か絵画ではなくガラス工芸や陶磁器でした。学生の身分で1点に1~2万円出したレベルでしたが、色や光沢の質感が美しくて感動した工芸品にお金を出して自分の日々の中に持ち帰ることに、喜び以外の何も感じませんでした。絵を見るのが好きだけれど、何故買いたいのは工芸作品なのだろう。

 

古賀さんのホームページもご紹介。

http://msykoga.com/

作品が繊細で美しすぎてなんだか泣きそうになりました。曲線、色彩、植物…。2012年、2014年の作品が特にたまらなく好きです。

 

古賀さんの制作を応援するためにも、家にきちんと置き場所をつくってぜひ作品を購入させていただきたいと思いました。

 

(清水悠子)

-展示レポート