作家リレーインタビュー

作家リレーインタビュー Vol.8

2018/12/05

作家リレーインタビュー第8弾は、藤川さきさんから紹介いただいた、金田涼子さんです。

金田涼子ウェブサイト:http://ryokokaneta.jp/

kanetaryoko1

「あめふり山」 606×910mm キャンバスにアクリル



 

kanetaryoko2

「夏の日差し」 350×800mm キャンバスにアクリル



金田さんは、作家活動を行いながらキュレーターという立場でも2012年から継続して同年代を中心とした企画展示「199X」を毎年開催されています。

 

河口:早速ですが、始めさせていただきたいと思います。近年の制作のテーマについて教えてください。

金田:もともと自然現象や自然そのものを擬人化するところから始まり、現在はそれに加えて、土地土地の伝承や土着的な思想など、目に見えないものを女の子という形で可視化して描いています。その流れの中でずっと制作していますが、近年のテーマ、興味ということで言えば、実際に特定の土地に行ってみて、体験や感じたことも作品に取り入れていることです。以前は文献を調べて描いていたのですが、それをしばらくやっている中で、実際の土地に興味が湧いてきました。去年くらいから山岳信仰のある山を題材に山シリーズを始めているのですが、実際に足を延ばすことで、知識だけでは得られない「そこ」の感覚を作品に盛り込もうとしています。

 

―:そうなんですね。金田さんの作品では、大きい人と小さい人が登場しますが、大きい人は雄大さや自然を表現しているのかなと思う一方で、小さい人はかなり俗人的な印象を受けます。どのようにキャラクターを使い分けているのですか?

金田:大きい子は自然そのものという擬人化、小さい子はその土地に残っている人々の想い、小さな痕跡、そういったものが溢れています。小さい子たちによっていろんな物語がつむがれる。女の子たちが同じ時を過ごしているのではなくて、画面の中で、昔、それから今のことを演じる様子を描いています。個性が出てしまうと嫌なので、大きい子ちゃん、小さい子ちゃんという呼び方をしていますが(笑)

 

―:なるほど、画面の中で小さい子ちゃんは、活き活きとしていて、それが金田さんが冒頭でおっしゃっていた「体験を盛り込む」ことに通じているように感じます。私はこの大きい子ちゃんがすごく好きだと思ったんですよ。キャラクターとして完成度が高くて、あまりこういった絵のスタイルの作家さんとお話しする機会なかったんですが、紹介いただいて、HP拝見して、あっ面白い、と思いました。

金田:ありがとうございます。大きい子に関しては、無慈悲さ、悪意のない感じ、それぞれのキャラクターがゆったり構えて、「ただそこに居る」ということを意識しています。小さい子はいろいろ動きまわっているけど、大きいのは自然物としての存在なので、あまり喜怒哀楽のない表情というか。不確かな表情、見る人がどうなんだろうと探れる曖昧さを残しておきたいと思っています。

 

―:絵画の中では、大きい子ちゃんが絵を支え、小さい子ちゃんがそこにスパイス(物語)を与えるような存在だと思うのですが、一方で、こちらのフィギュア、おそらく小さい子ちゃんは、作品として独立している感じを受けます。どのようなスタンスで制作されているのでしょうか?

kanetaryoko4
「小さい子ちゃんフィギュア」 レジンキャストにアクリル

「小さい子ちゃんフィギュア」
レジンキャストにアクリル



金田:最初はグッズという扱いで作っていたものをより作品として発表してみたくなって制作しました。画面にいる子がそのまま現実にいるような感覚を与える立体作品にしたくて、クオリティーや造形にこだわって作っています。量産できる作品を考えて、レジンキャストという素材を使っています。原型をつくって、シリコンで型をつくって・・・完全に一般的なフィギュアの工程と同じです。

 

―:ほー、失礼ながら、今日お会いするまで、絵画も想像の中のものを描かれていると思っていました。実際に様々な土地に足を運んでいることや文献から土地の伝承を調べていらっしゃること、立体作品に対する姿勢も、かなりの研究されていますね。

ところで、次の質問に移りますが、転機となった作品があれば教えてください。

金田:こちらの「小舟」という作品です。学生時代に描いた作品で、この時に自分の中で、自然現象を女の子に疑人化して描くことが確立して、それでずっとポートフォリオにも残しています。

kanetaryoko3

「小舟」 364×515mm 木製パネルにアクリル



大学は横浜美術大学のビジュアルデザイン領域イラストレーション学科というところで、小説の挿絵、公共ポスターとか商業的な印刷物を前提に絵を描いて、最終的には文字入れなどをソフトでデザインをしたものを提出する、商業的な学びが中心の学科だったんです。課題で自分の色は出せますが、基本的にクライアントを想定してイラストレーションとして絵を描く必要があるのが苦しくて、なんかやりたいことと違うと思っている中で、作家として展示といった形で作品を発表していきたい自分を見つけられました。

 

―:そうだったんですね。でも、いわゆるファインアートの学科だったら、絵画とイラストの境目のような面白い作品は生まれてこなかったのかもしれませんね。

金田:確かに、絵画の方の学部は関りが少なかったのであまり分からないですが、だからこそ今の表現ができたのかもしれません。

違うからこそ生まれることはきっとあって、今、自然をモチーフに描きだしたのも、大学のために引っ越してきてから自分が育ってきた自然と都会の違いに気付いて、いちど自分の常識から身を置いたからです。実家が茨城の田舎にあるのですが、ずっといたら、身近すぎて気にならなかったと思う。離れてみて初めて場所特有のものがあるのだなと気付きだした。

日常と異なる場所ということで言えば、1年ちょっとオーストラリアにいました。オーストラリアはレンタルスタジオが多くて、滞在中はずっとスタジオで制作していて、最後に成果発表で個展を行いました。私は、自分の生活圏が題材になるので、必然的に日本的になります。それは題材だけではなくて、俯瞰している平面的な表現とかも取り入れたりしていて。

オーストラリアにいたときは、軽いドローイングで現地を題材にした作品も描きましたが、ペインティングとしては消化するには時間が短すぎて、他は普段通りの作品でしたね。土地土地で捉えられる自然って違うので、もっと色々なところを旅したいと思っています。

 

―:金田さんのお話をうかがっていると、もともと「絵を描く」ということがとっても好きな方なのだと感じますが、どこから美術に興味を持たれたのでしょうか。

金田:大学に入るまでは、ギャラリーとかは身近になくて、展示といえば美術館でした。家族旅行の際に美術館に行くというくらいのもので、そこまで美術というものを意識せずに大学にあがりました。

大学が横浜だったので、小さいギャラリーを回ったり、美術館に行くっていうことを日常生活として取りいれることをそこで初めて知りました。いろいろ回っているうちに、今まで美術といえば巨匠しか見てこなかったのが、同じ世代で個展している、活躍している、いろいろな作家を知るようになって、そこから自然と興味を持つようになっていきました。

今まで自分とは切り離されていたものとして捉えていたものが、同世代を見て、近いものなんだなということを意識しはじめてその衝撃は大きかったです。大学に入る前までの自分から切り離されていた美術と、入学してからのものでは全然違うかもしれない。

 

―:それが、キュレーションをするきっかになったりしたのですか?

金田:それはあるかもしれないです。大学1,2年で展示に興味を持ち始めて、だいたいその頃って大学の友達と一緒に貸しギャラリー借りて、大学の仲間と一緒に展示するじゃないですか。私も、それを1,2回やったんですけど、そうなると、仮に学外で展示したとしても、結局来るのは大学の同じ学科とか友達なんですよ。展示経験と、作品を完成させる、といういい経験ではあったんですが、内輪で循環していく、外への広がりがない感じがもどかしくて。

自分の中でもっと広がりが欲しいなと思っていたところ、ツイッターを通して、自分で展示企画をしている人がいるということを知りました。ネットで公募という形で、私が主催となって、最初は14人で高円寺で開催したのが始まりで、一番多いときは25人程集まって、毎年半分くらい入れ替えがありながら続けています。

 

:今回7回目を迎える「199Xーえっくす)」ですね。

金田:はい。私が91年生まれで、自分と同世代の知らない作家は何を考えて制作しているのだろうという興味から、一緒に展示空間を作りたいと思い、テーマは定めずに、90年代生まれの作家を集めて展示企画をしてきました。

5回目までは公募でやってきて、テーマは定めないとはいっても、過去の展示や私の作風を見て、集まってくれる作家で構成しているので、回を重ねるごとに「199X」の色は出てきました。でも展示として公募だとコントロールできないんです。コントロールできない偶然性も面白いんですが、展示として成長していくためにも完成された強度を作りたくて、ちょうど5回でキリが良いこともあって、私が作家を選ぶキュレーションという形に変更して、昨年の6回目からやっています。展示は、続けていくことがすごく大切で、「199X」自体、10回20回と続けていくうちに、この世代の美術の流れの小さい一つになるといいなと思っています。

 

:今後、ご自身でキュレーションされる「199X」の方向性というと、何かテーマを定めていくというとでしょうか?

金田:テーマというよりはそれぞれの作家の作品への向き合い方だと考えています。

私がいわゆるキャラクター的な表現をしていて、私と同じような表現をしている同世代の作家さんにすごく興味があって、そこからキャラクター的表現を通してどういった作品を作っていくのか、ということを知りたくて、そういった方を集めてキュレーションしています。ツイッターで見るといろんな方がいらっしゃるんですけど、なんで敢えて展示という形式で作品を発表していくのか、ということに対しても興味があります。

 

:それは、私も興味のあるころです。多くの方がネット上で作品を発表している中で、して敢えてイラストではなくて絵画なんでしデジタルでもいいところを、うして手で描くのですか?

金田:ひとつには、私自身が展示に行って感動するということがあって、展示空間の雰囲気、作品の厚み、空間全体からくる圧力が好きで、立体としての重さ、絵具の厚みが伝わって、作品を展示空間に足を運んでみてもらいたいと思います。あとは、画像だと良くも悪くもまとまりすぎてしまって。題材がキャラクター的であったとしても絵画ならではの複雑さはデジタルでは表現しにくいと思っています。

 

そうすると、今、ットで作品をほぼ全部公開されていることに関してはどうなのでしょうか。実物より作品が良くも悪くも簡単に見えてしまう、ということはあると思うのですが。

金田:展示初出しのものに関しては、SNS上で全体は出さないようにしています。ネットに出しているのは全て過去作です。展示が終わった後で、展示に来られなかった方にも見ていただけるようにネットで公開しています。現物は見て欲しいと思うので、ネットで公開するタイミングには気を遣っています。

 

:金田さんのウェブサイトには、購入する方に向けたコンタクトフォームがありますが、実際にウェブ上から直接購入する方はいらっしゃのですか?

金田:初見での問い合わせはあります。でも多くは、展示を見に来て、帰った後、反復して思い出しているうちに、やっぱり欲しいとなって問い合わせしてくる方で、何人かいらっしゃいます。あとは、一回購入してくださっている方は、現物の感じを知っているので、ウェブで見てお問い合わせくださる方もいますね。

 

うなんですね。う思うとネトで買える気軽さは提供しつつも、リアルの場の存在は重要ですね。展示を見てくれた人が思い出してまた連絡してくれる、っていうのは嬉いですね。

最後に、今後、作家としてどのような活動の展開の仕方を考えていらっしゃいますか。今後の展望や今挑戦されているとなどありましたらお聞かせください。

金田:最近いろんなご縁で海外でも展示できることが多くなってきたので、国内外いろいろな場所で作品を発表していきたいです。現地へ行けない展示だとギャラリーを介してのため直接感想などを聞ける機会は少ないのですが、海外の人と日本の人とで作品に対するとらえ方が違うみたいなので聞いてみたいです。

あとは、制作に関係するところですと、山登りでしょうか(笑)。今は山を中心に訪れていますが、もっといろんなものを見たい。実際の場所に出向いて取材することを作品に取り入れているので、色々なところに行って視野を広げたいと思っています。

 

キャラクター的な表現で、自然や土地を表現されてきた金田さん。テーマは一貫しつつも、興味の幅を広げながらそれが作品に反映されていく様子を垣間見ることができまた。今後のご活躍も楽しみにしております。本日は、ありがとうございました。

-作家リレーインタビュー