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Column

展示レポート Vol.13

昨年の12月13日、中央区の新富町駅から徒歩1分の場所にあるギャラリーオリムへ、吉田明恵さんの個展を見に行ってきました。 

 

これまで大学関係や知人作家の告知で知った展示の紹介が多く、私自身が内輪感に若干飽きてきたため、全く知らない作家さんの展示へ行くことを今回のテーマにしました。

Facebook上で今回の個展のイベントページを見かけ、作品画像とコンセプトが面白く魅力的に感じたため、吉田さんの個展をチョイス。

前日に一度、下見として同様にピックアップした他の作家の展示を含め4か所ほど巡りましたが、吉田さんのものが最も見応えがあり、ご本人にお話を伺いたく翌日に再度訪問して来ました。

今回の面白さの要素の1つとしてあったのが、こちらのギャラリーの独特の内装空間でした。

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全体が黒い壁で、展示空間としてはかなり小さい方に感じました。

ギャラリーの方にお話を伺うと、創業30周年になるこちらのギャラリーはもともと画商同士のやり取りのために使用してきた空間なのだそうです。黒く立派なソファーも置かれ、なるほど応接室のような設備になっているのも納得でした。

30周年の今年、初めてオープンギャラリーとして一般の方も来られる展示空間として使用を始め、外部の作家に声がけをして行う企画展示もこれが2度目となるそうです。

 

私が吉田明恵さんについて事前に得ていた情報には、画像を見るに抽象画の作家であること、個展情報に添えられていた文章にあった貝殻や鉱物、ミネラルというキーワードとがありました。

そうしたキーワードが作風とどう結びついているのかネット上の画像からでは汲み取り切れなかったのですが、作品実物を見つめお話を伺ってゆくとその結びつきがよく分かってきました。

まず、入って右手の開けた空間の小作品から見てゆきます。

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壁の高い位置にあった紫の作品。メタリックな質感が強いのはこの作品だけでした。

ex_report13_3隣の壁の3作品。

ex_report13_4こちらの作品が、この展示の中で吉田さんご自身が一番よい出来だと感じているものだそうです。

他の作品よりも、キャンバス地を思いっきり残した状態なのが印象的です。ex_report13_5透明感とツヤのあるアクリルメディウムが、それ自身の動きのまま力強く使われているのが吉田さんの作風の特徴だと感じました。メディウムのそうした使われ方が伝わりやすい作品でした。

ex_report13_6並んだ3作品の一番左の黄色が強い作品を見ると、透明なメディウムの上から色がさらに重ねられ、積層構造のような独特の質感が生み出されているのが見て取れます。ex_report13_7

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続いて向かいの壁へ。元々こちらのギャラリーに置かれていた奥の棚の彫刻作品とそのまま展示空間を共にしているのが面白いです。
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ex_report13_10こちらの黄色が強い作品。上部に積層が薄く抜けてゆくような部分があり、私はそこの美しさに惹かれました。油彩画のような温かい質を感じます。物質としての距離は、絵具の重なりの手前と奥という数ミリ程度の厚みの差のはずなのですが、絵の中に広い奥行きを感じることができます。

ex_report13_11隣のこちらの作品は、しっかりと絵具が画面を覆い、アクリル絵具らしい質や色を強く感じます。

層の薄くにじんだような不思議な色合いの部分、アクリルメディウムの重ねられた部分など、1枚の絵の中にいくつかの質感が同居している吉田さんの作品。制作の過程についてご本人に伺うことができたので、少しご紹介させていただきます。

幼少期より、石や貝殻など年月が積み重なったような積層の現象を持つものが好きで、よく集めていらっしゃったそうです。現在の制作では、とある幻想的で魅力的な模様の石をモチーフに、その模様を拡大した画像をキャンバスに転写し、その上から感覚的に絵具を置いているそうです。転写イメージの元となっている石の写真を見せていただきましたが、魔法のようなカラフルな色味と深みを含有していて、天然の石なのかどうかを疑いたくなる美しさでした。

鉱物という物質の強さ、美しさ、深みを絵画の画面上に展開されているのですね。

また、作品ごとに色味の傾向が様々なのも印象的でした。その点について伺ったところ、自分の好きな色などに偏らないよう作品の色味の幅を意識されているそうです。

ex_report13_12鮮やかな青緑が美しいこちらの作品は、アクリル絵具らしい発色なのかと思いきや、素材は油絵具なのだそうです。なるほど、素材にこっくりとした重みがあり、中央の透けた部分が美しいです。ex_report13_13

続いて下はギャラリーに入って正面の位置にあった大きな作品。色彩が軽やかで清々しいです。ex_report13_14

ex_report13_15aここからはギャラリーに入って左側、応接間のようなソファーとテーブルの置かれたエリアです。オーナーが購入されたという、芸術家・バンクシーの作品モチーフの像が置かれています。美術大学出身というオーナーご自身が金色のスプレーで加工されたそうです。面白いですね。ex_report13_15b

バンクシーの隣には、ペインティングナイフの動きが見える、茶色みの作品。
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ex_report13_17赤い壁との対比が印象的な水色の作品。均一な水色で視界が覆われ、ブラインドの隙間から向こう側の世界を覗き見ているような印象です。水色の奥にある透明メディウムの層が効いています。
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ex_report13_19左上にキャンバス地がはっきり残されている作品。左上に強い光が当たり、写真では透明メディウムが白く煌めいて見えています。転写にもムラを付けてあることで、偶発的な素材たちの自由さがあります。ex_report13_20

最後にご紹介するのは、今回の展示の中で私が一番良いと感じた作品です。油絵具と金箔が使われ、落ち着いた色味が他の作品と雰囲気を異にしています。教えていただいて興味深かった点は、立って作品を見た時と、ソファーに座って見た時とで金箔の煌めきの見え方が変わるところでした。

全体と明るく写すとこのような作品。
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ex_report13_22転写の虹色の部分が中央に広く残っていて、色味も重く、とても美しいです。転写のムラの筋が、私には水流のように見えます。緩やかな流れの大きな河を、絵の向こう側に見ているような感覚です。

画面の右寄りに、大きな金箔が縦に入っています。その部分が夕日を映す川の水面の煌めきのように見え、私には牧歌的な川の情景のように感じられました。

ソファーに腰掛けて少し暗めに全体を撮影した下の写真を見ていただくと、縦長の金箔の輝きが伝わりやすいかもしれません。ex_report13_23この作品はこのギャラリーが黒い壁であるおかげですごく引き立っている、と吉田さんは仰っていました。言われてみれば確かに、黒い額装をしてる他のいくつかの作品は白壁の空間でも同じような魅力で見えそうですが、額装がなく落ち着いた色味のこちらの作品は、真っ白な壁に展示すると見え方が全く変わってくるかもしれません。

色々なことを考えたり、想像したり。ソファーに座ってずっと見ていたいと思える作品でした。手頃なサイズと値段であれば、購入したかったぐらい。

 

最後に、モビールが飾られていて面白かったギャラリーの一部分をご紹介して終わります。ex_report13_24

今回の展示作品にはありませんでしたが、英字のロゴを絵に重ねたような作品も制作されている吉田さん。そちらのイメージも非常に格好良く、今後の制作スタイルに注目し続けたいと思えるアーティストでした。

2019年中之条ビエンナーレへの参加が決まっているそうです。どのような作品が発表されるのか、今から非常に楽しみですね。

(清水悠子)


 

吉田明恵さんは現在、渋谷西武にて個展を開催されています。吉田さんの作品上の不思議な質感を皆さまぜひ直にご高覧ください。

 

Akie Yoshida -Brilliant Mineral-

2019年01月16日-27日 西武渋谷店B館8階 美術画廊・オルタナティブスペース

10:00-21:00(日曜日のみ20:00まで)

https://www.sogo-seibu.jp/shibuya/topics/page/181207yoshidaakie.html

 

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